6 か月
1 か月
急増するデータにも安定して対応
短期間での新機能の追加
概要
グリーンテックによる脱炭素化の研究・開発を行う株式会社アイ・グリッド・ラボ。同社は多種多様なデータを AI で分析し、太陽光余剰電力のきめ細かいコントロールを行う『R.E.A.L. New Energy Platform』を 2022 年 6 月にリリースしました。その基盤としてアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用して短期間での実証実験と膨大なデータの高速処理を実現し、グリーントランスフォーメーション(GX)の加速に貢献しています。
ビジネスの課題 | 再エネ利用拡大の鍵は「AI の活用」
アイ・グリッドグループは再生エネルギーや脱炭素を中心に社会 / 経済活動を実現するグリーントランスフォーメーション(GX)の加速に向け、GX を具体的に推進する「GX ソリューション事業」を中心に事業を展開しています。その中でアイ・グリッド・ラボは 2022 年 6 月に『R.E.A.L. New Energy Platform』をリリースし、グループ企業の VPP Japan における本格導入を開始しました。
R.E.A.L. New Energy Platform は、AI による高精度の余剰電力予測と、分散型エネルギー源(DER)のきめ細かい自動制御を実現するエネルギーマネジメントプラットフォームです。太陽光発電量 / 電力需要量 / 蓄電池や EV の充放電状況等の情報を収集し、それらのデータをクラウドに蓄積、さらに電力市場価格等の外部情報と併せた高精度な予測分析を AI が行い、太陽光発電の余剰量算出や機器の自動制御シナリオを作成するとともに、EV への充電 / 放電の最適なタイミングを AI で判別しています。
VPP Japan は『R.E.A.L. Solar Power』という太陽光発電システムによる分散型太陽光発電所を国内最大に保有しており、まずはそこで生み出された余剰電力をこのプラットフォームで地域循環させることを目指しています。
アイ・グリッド・ラボの取締役 CTO を務める岩崎哲氏は「再生エネルギーの利用を広げていくには、AI の活用が重要な鍵になると考えていました」と語ります。商業施設などで自家消費型太陽光発電の設置が増えていますが、余剰電力をコントロールすることが難しく、これまでは施設で消費しきれる分しか導入できないケースが一般的でした。「余剰電力を AI で適切にコントロールし、他の利用者にも提供しようというのが基本的なコンセプトです。これにより余剰電力の循環モデルを実現し、太陽光発電の導入を最大化することで、再生エネルギーの利用比率を高められます」
AWS ならサーバーレス型で提供されている機能が豊富で、大量データの高速処理も可能です。新しい機能を短期間で安定稼働させられることは、大きなメリットです”
岩崎 哲 氏
株式会社アイ・グリッド・ラボ 取締役 CTO 博士(環境学)
ソリューション | わずか 6 か月で実証実験を開始し、1 か月後には最初の結果を公表
2020 年 10 月にアイ・グリッド・ラボにジョインした岩崎氏は、同年 12 月に次世代エネルギープラットフォームの構築プロジェクトを本格的に開始し、2021 年 1 月に AWS 上での開発に着手します。一方で、既にアイ・グリッドグループで多拠点に太陽光パネルを設置していたスーパーマーケットチェーンに協力を依頼。埼玉県内 2 店舗における実証実験を行いました。
「このようなプラットフォームの構築は業界初の取り組みで、机上で検討するよりも実際に作って動かすことで、効果や問題点を具体的に把握できます。アジャイル型で素早く動き出すことが重要でした」(岩崎氏)
プロジェクト開始からわずか 6 か月で実証実験用のプラットフォームを構築。エッジデバイスからのデータ収集に AWS IoT Greengrass、大量の時系列データの高速処理に Amazon Timestream を採用し、2021 年 6 月に実証実験を開始しました。7 月には具体的な効果と問題点を明確化し、その内容を自社ホームページで公表するとともに、それまで外部サーバーで稼働させていた AI 機能を Amazon SageMaker へと移行しています。
その後も実証実験を継続し、2022 年 1 月に第 2 弾としてネットスーパー用 EV も取り込んだ「ラストワンマイル物流の脱炭素化」に着手。並行してアイ・グリッドグループが提供する約 500 か所の太陽光施設への適用も開始。さらに 2021 年 12 月、一般家庭に電力を送るための託送システムとも連携。約 10 万世帯から電気使用量などに関するデータを収集、分析しています。
そして前述のとおり、2022 年 6 月にこのプラットフォームを商用化。関連サービスや製品のブランド名を『R.E.A.L.』に統一し、アイ・グリッドグループで提供する各種サービスの相互連携も強化しています。
アーキテクチャ
導入効果 | クラウド構成を AWS に一本化して変化する事業環境に対応
R.E.A.L. New Energy Platform の基盤に AWS を採用した理由は大きく 3 つあると岩崎氏は語ります。1 つは、サーバーレス型で提供されている機能が豊富で、開発がスピーディに進められることです。「世界はすでに VUCA(Volatility/Uncertainty/Complexity/Ambiguity)の時代に入っていると言われていますが、そのなかでもエネルギー業界は急速な勢いで変化し続けています。この変化に迅速に対応し続けるには、コーディングやドキュメント作成に要する時間を最小化することが重要です。AWS のサーバーレス型機能を活用すれば、これを容易に実現できます。実証実験でも、細かいリリースを 1 週間毎に行うことで、1 か月サイクルで検証を行うことが可能になりました」
2 つ目は、大量データの高速処理です。エッジデバイスからは各種センサーの時系列データが毎分収集され、気象情報のデータや電力市場価格データも刻々と集められています。管理対象となる発電設備や託送先の数が増えれば、当然それに比例してデータ量も増えていきます。「アイ・グリッドの事業拡大のスピードが速いため、当初の計画よりも運用規模が大きくなる可能性もありますが、スケーラビリティに優れた AWS なら安心して運営できます」
3 つ目はエンジニアを確保しやすいことと、AWS からの手厚いサポートです。「R.E.A.L. New Energy Platform に実装したい機能は多岐にわたっているため、それに対応できる開発体制を確立しやすいことも重要です。また AWS は問題発生時の対応も早く、新機能を短期間で安定稼働させられます。当初はマルチクラウド構成も検討しましたが、最終的には AWS に一本化した方が、メリットが大きいと判断しました」(岩崎氏)
現在は商業施設のほか、自治体や地銀とも連携し、R.E.A.L. New Energy Platform の活用領域を拡大中です。街全体を再生エネルギー 100% にしていくことで、「“面”としての GX City」の実現を目指しています。
「2030 年までにはこのプラットフォームで、再生エネルギー 100 % の GX City を 10 か所作ることを目指しています」と岩崎氏は、脱炭素で地域を活性化し、経済成長に結びつけるという構想もあると語ります。
「R.E.A.L. New Energy Platform を活用したビジネスは今後も継続的に進化し、それに合わせて新たな機能の開発も進んでいくでしょう。AWS にもパートナーとして、さらにサービスの質や種類を進化させていただくことを期待しています」
カスタマープロフィール: 株式会社アイ・グリッド・ラボ
DER(分散型電源)プラットフォーム構築事業、AI 搭載エネルギーマネジメントサービス「エナッジ」、電力小売事業(法人/家庭向け)、を手がける株式会社アイ・グリッド・ソリューションズの子会社として AI・IoT・クラウド技術を用いた分散型エネルギープラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform」の構築およびエネルギーのビッグデータ解析、AI・DXの活用支援を実施。
岩崎 哲 氏
ご利用中の主なサービス
AWS IoT Greengrass
AWS IoT Greengrass は、オープンソースのエッジランタイムであり、デバイスソフトウェアを構築、デプロイ、管理するためのクラウドサービスです。
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Amazon Timestream
Amazon Timestream は、高速かつスケーラブルなサーバーレス時系列データベースサービスです。1 日あたり数兆件規模のイベントを最大 1,000 倍の速度でより簡単に保存および分析できます。
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Amazon SageMaker
Amazon SageMaker は、製品のレコメンデーション、パーソナライズ、インテリジェントショッピング、ロボット工学、音声支援デバイスなど、実際の機械学習アプリケーションの開発における Amazon の 20 年の経験に基づいて構築されています。
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AWS IoT Core
AWS IoT Core では、何十億もの IoT デバイスを接続し、何兆ものメッセージをインフラストラクチャを管理することなく、AWS のサービスにルーティングすることができます。メッセージブローカー ミラーデバイスの状態 組み込みの Alexa LoRaWAN デバイス
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