IoT を活用した牛の行動モニタリングシステムに AWS のマネージドサービスを活用
Amazon SageMaker により分析時間を 1 日から数時間に短縮
Amazon SageMaker により分析時間を 1 日から数時間に短縮
2022
AgriTech（アグリテック）企業として、IoT を活用した牛の行動モニタリングシステム『U-motion』を提供するデザミス株式会社。同社は『U-motion』のプラットフォームを、アマゾン ウェブ サービス（AWS）のマネージドサービスを適材適所で利用しながら、開発・改善を続けてきました。現在、国内 13 万頭の牛に取り付けたセンサーから取得した 300TB に及ぶデータをもとに牛の行動などを AWS 上で解析しています。Amazon SageMaker の活用で、分析時間は従来の 1 日から数時間に短縮。さらに Amazon SageMaker AutoPilot を利用して適合度確認工数の 75% 削減を実現しています。
AWS がなければ、急速にビジネスをスケールさせながらここまで成長することはできませんでした。データ管理の安全性に不安に感じている牧場主に“Amazon のクラウドを使っている”と伝えると、それだけで安心してもらうことができます
清家 浩二 氏
デザミス株式会社 代表取締役 兼 CEO
デザミス株式会社 代表取締役 兼 CEO
牛に取り付けたセンサーデータを分析し AI が発情兆候や疾病兆候などを検知
「データから農業を変革する」を理念に、農業 IoT クラウド事業と農業コンサルティング事業を展開するデザミス。同社は大手家電メーカーで 20 年以上農業に携ってきた代表取締役兼 CEO の清家浩二氏が、2016 年に創業しました。
「IT 化が遅れている日本の農業には、効率化の余地があると感じていました。その中でも畜産分野では、牛の行動データを正確に把握することができれば、属人的な飼育管理のあり方を変え、日本の農業全体を変革できるのではないかという思いを秘めて起業しました」（清家氏）
同社が提供する『U-motion』は、IoT で牛の行動をモニタリングするサービスです。複数のセンサーを内蔵した首輪型のタグを取り付け、「採食」「飲水」「起立」「反すう」など 7 つの行動を 24 時間記録。それらのデータを AWS 上にリアルタイムに集約し、AI が牛の発情兆候、疾病兆候などを検知して牧場主にアラートで通知します。
「酪農や畜産において、繁殖業務の起点となるのは牛の発情情報です。これまでは目視で確認していましたが、人力では限界がありました。IoT 化すれば誰でも判断が容易となり、農家や獣医師の省力化に貢献できます。体調の悪い牛を早期に見つけ出すことで、突然死による経済的損失を防ぐことができます」（清家氏）
2016 年に『U-motion』をリリースして以来、2021 年までに国内で 600 以上の牧場に採用され、13 万頭以上の乳牛や肉牛へサービスを提供しています。センサーのデータ量は今までに 300TB に達し、加えて牛の行動情報や牛舎の環境情報などが日々蓄積されています。
「IT 化が遅れている日本の農業には、効率化の余地があると感じていました。その中でも畜産分野では、牛の行動データを正確に把握することができれば、属人的な飼育管理のあり方を変え、日本の農業全体を変革できるのではないかという思いを秘めて起業しました」（清家氏）
同社が提供する『U-motion』は、IoT で牛の行動をモニタリングするサービスです。複数のセンサーを内蔵した首輪型のタグを取り付け、「採食」「飲水」「起立」「反すう」など 7 つの行動を 24 時間記録。それらのデータを AWS 上にリアルタイムに集約し、AI が牛の発情兆候、疾病兆候などを検知して牧場主にアラートで通知します。
「酪農や畜産において、繁殖業務の起点となるのは牛の発情情報です。これまでは目視で確認していましたが、人力では限界がありました。IoT 化すれば誰でも判断が容易となり、農家や獣医師の省力化に貢献できます。体調の悪い牛を早期に見つけ出すことで、突然死による経済的損失を防ぐことができます」（清家氏）
2016 年に『U-motion』をリリースして以来、2021 年までに国内で 600 以上の牧場に採用され、13 万頭以上の乳牛や肉牛へサービスを提供しています。センサーのデータ量は今までに 300TB に達し、加えて牛の行動情報や牛舎の環境情報などが日々蓄積されています。
活用事例が豊富な AWS を採用しマネージドサービスでアーキテクチャを構築
『U-motion』の開発にあたっては、当初から AWS のサービスを採用しています。その理由を創業時から開発を主導する取締役兼 CTO の小佐野剛氏は次のように語ります。
「AWS IoT をはじめ、私たちが実現したい機能をすべて備え、効率的に開発できることに魅力を感じました。一番の理由は、活用事例が豊富にあり、技術情報に困らないからです。また、前職で私自身も AWS の利用経験があったことや、周辺に AWS を理解するエンジニアが多いことも採用のポイントになりました」
『U-motion』で扱うデータ量は、管理する牛の数が増えるほど増加していきます。センサーも、牛の首に付けるタグの他、牛舎の情報を取得するセンサー、環境情報を取得するセンサーと種類が多く、取得のタイミングや要求される耐障害性も異なります。さまざまな環境から取得した大量のデータを安全に保管し続けるために、同社は AWS のマネージドサービスとスケーラビリティに注目しました。
「初期のアプリ開発は 2 名で行いました。この分野のエキスパートがいないため、私自身は飼養管理の基礎知識を学習しながら全国の牧場を回って牛の行動パターンや飼養形態を調査しました。東京にいる社員には、現場からの情報をフィードバックして開発を進めました」（小佐野氏）
「AWS IoT をはじめ、私たちが実現したい機能をすべて備え、効率的に開発できることに魅力を感じました。一番の理由は、活用事例が豊富にあり、技術情報に困らないからです。また、前職で私自身も AWS の利用経験があったことや、周辺に AWS を理解するエンジニアが多いことも採用のポイントになりました」
『U-motion』で扱うデータ量は、管理する牛の数が増えるほど増加していきます。センサーも、牛の首に付けるタグの他、牛舎の情報を取得するセンサー、環境情報を取得するセンサーと種類が多く、取得のタイミングや要求される耐障害性も異なります。さまざまな環境から取得した大量のデータを安全に保管し続けるために、同社は AWS のマネージドサービスとスケーラビリティに注目しました。
「初期のアプリ開発は 2 名で行いました。この分野のエキスパートがいないため、私自身は飼養管理の基礎知識を学習しながら全国の牧場を回って牛の行動パターンや飼養形態を調査しました。東京にいる社員には、現場からの情報をフィードバックして開発を進めました」（小佐野氏）
リザーブドインスタンス等を駆使しサーバーや DB のコストを最大 40% 削減
現在、データ収集の基盤には、用途に応じて Amazon RDS、Amazon DynamoDB、Amazon ElastiCache などを活用。モニタリングする牛が増加しても、すぐにスケールできるように最新のセンサーデータは Amazon DynamoDB に格納し、過去データは Amazon S3 で管理することでコストの効率化を図っています。
24 時間 365 日の安定稼働に向けては、障害発生前と発生時の検知は Amazon CloudWatch を活用し、牛に近い領域では、AWS Lambda を利用して行動ログに基づく異常検知を行っています。
分析基盤では、速やかに分析ができるように、クエリーサービスの Amazon Athena と機械学習モデル構築の Amazon SageMaker を使い分け、運用負荷の軽減を図っています。
「Amazon SageMaker は、GPU に依存しないデータサイエンティスト用の端末を実現するために採用しました。高スペックの GPU でも、いずれは陳腐化します。そのためにもスケールがしやすいクラウドが最適でした。その結果、分析時間はこれまでの 1 日から数時間に短縮されました。データサイエンティストは、分析期間中も端末をフルに利用することができ、業務の効率化にも貢献しています」（小佐野氏）
最近では機械学習モデルを自動的に作成する Amazon SageMaker AutoPilot を利用し、初期段階のモデルセットの適合度確認を実施しています。その結果、作業時間が従来の約 2 時間から 30 分に短縮され、適合度確認工数を 75% 削減することができました。
コスト面では、リザーブドインスタンスと Savings Plans を活用してサーバーや DB のコストを最大 40% 削減。さらに、アーカイブ機能の Amazon S3 Glacier Deep Archive を利用してセンサーデータを圧縮して保存し、70% 以上のストレージコストの削減を実現しています。
「コストは、エンジニア 1 人ひとりが意識できるように、サービスごとの料金や削減余地を全体でシェアしています。結果、透明性が確保され、効果的にコスト改善が進んでいます」（小佐野氏）
24 時間 365 日の安定稼働に向けては、障害発生前と発生時の検知は Amazon CloudWatch を活用し、牛に近い領域では、AWS Lambda を利用して行動ログに基づく異常検知を行っています。
分析基盤では、速やかに分析ができるように、クエリーサービスの Amazon Athena と機械学習モデル構築の Amazon SageMaker を使い分け、運用負荷の軽減を図っています。
「Amazon SageMaker は、GPU に依存しないデータサイエンティスト用の端末を実現するために採用しました。高スペックの GPU でも、いずれは陳腐化します。そのためにもスケールがしやすいクラウドが最適でした。その結果、分析時間はこれまでの 1 日から数時間に短縮されました。データサイエンティストは、分析期間中も端末をフルに利用することができ、業務の効率化にも貢献しています」（小佐野氏）
最近では機械学習モデルを自動的に作成する Amazon SageMaker AutoPilot を利用し、初期段階のモデルセットの適合度確認を実施しています。その結果、作業時間が従来の約 2 時間から 30 分に短縮され、適合度確認工数を 75% 削減することができました。
コスト面では、リザーブドインスタンスと Savings Plans を活用してサーバーや DB のコストを最大 40% 削減。さらに、アーカイブ機能の Amazon S3 Glacier Deep Archive を利用してセンサーデータを圧縮して保存し、70% 以上のストレージコストの削減を実現しています。
「コストは、エンジニア 1 人ひとりが意識できるように、サービスごとの料金や削減余地を全体でシェアしています。結果、透明性が確保され、効果的にコスト改善が進んでいます」（小佐野氏）
海外にビジネスを拡大しながらデータを利用した新サービスの提供へ
設立以来、AWS とともに進化を遂げてきた『U-motion』。清家氏は「AWS がなければ、急速にビジネスをスケールさせながらここまで成長することはできませんでした。データ管理の安全性に不安に感じている牧場主に“Amazon のクラウドを使っている”と伝えると、それだけで安心してもらうことができ、当社もネームバリューを利用させてもらっています。牧場主からは、経営改善ができた、精神的な重圧から解放されたといった声をいただき、若い人からも仕事が楽しくなったという反響もあります。酪農・畜産のスマート化に貢献できていると実感しています」と語ります。
今後は、海外にもビジネスを拡大していく方針で、2020 年にはデンマークにおいて、『U-motion』を使った乳牛の発情検知の実証実験を実施しました。その後も、酪農や畜産が盛んなインド、中国、韓国などにもサービスを提供し、世界のマーケットに挑戦していきます。
もう 1 つの構想は、13 万頭の牛のデータを利用した新たなサービスの提供です。2020 年には保険会社とともに、『U-motion』に保険を付帯した牛の診療費補償サービスを提供しました。
「今後はこうしたノウハウを発展させ、関係事業者と連携しながら新たな金融サービスを提供し、日本の農業の発展に貢献していきます」（清家氏）
IT 面では、最も輝いたスタートアップの CTO を決める 2020 年の『CTO of the year』で、小佐野氏が大賞を受賞するなど、テック界隈でも高い注目を集めています。
小佐野氏は「今後も AWS の豊富なサービスを活用し、畜産業界における世界一のデータカンパニーを目指していきます。AWS にはフルマネージド型コンテナアプリの AWS App Runner 等、誰でも簡単に扱えるサービスへの進化を期待しています」と語っています。
今後は、海外にもビジネスを拡大していく方針で、2020 年にはデンマークにおいて、『U-motion』を使った乳牛の発情検知の実証実験を実施しました。その後も、酪農や畜産が盛んなインド、中国、韓国などにもサービスを提供し、世界のマーケットに挑戦していきます。
もう 1 つの構想は、13 万頭の牛のデータを利用した新たなサービスの提供です。2020 年には保険会社とともに、『U-motion』に保険を付帯した牛の診療費補償サービスを提供しました。
「今後はこうしたノウハウを発展させ、関係事業者と連携しながら新たな金融サービスを提供し、日本の農業の発展に貢献していきます」（清家氏）
IT 面では、最も輝いたスタートアップの CTO を決める 2020 年の『CTO of the year』で、小佐野氏が大賞を受賞するなど、テック界隈でも高い注目を集めています。
小佐野氏は「今後も AWS の豊富なサービスを活用し、畜産業界における世界一のデータカンパニーを目指していきます。AWS にはフルマネージド型コンテナアプリの AWS App Runner 等、誰でも簡単に扱えるサービスへの進化を期待しています」と語っています。
清家 浩二 氏
小佐野 剛 氏
カスタマープロフィール：デザミス株式会社
- 設立：2016 年 6 月
- 資本金：1 億円
- 事業内容：農業 IoT クラウド事業、農業コンサルティング事業
AWS 導入後の効果と今後の展開
- Amazon SageMaker により、分析時間を従来の 1 日から数時間に短縮
- Amazon SageMaker AutoPilot により、機械学習のモデルセット時間を従来の約 2 時間から 30 分に短縮（75% の工数削減）
- リザーブドインスタンスと Savings Plans の活用で、サーバーや DB のコストを最大 40% 削減
- 『 U-motion』の海外展開
ご利用中の主なサービス
AWS IoT
産業用、消費者用、商用ソリューションのための IoT サービス
Amazon SageMaker
Amazon SageMaker は、すべての開発者やデータサイエンティストが機械学習 (ML) モデルを迅速に構築、トレーニング、デプロイできるようにする完全マネージド型サービスです。
Amazon Athena
Amazon Athena はインタラクティブなクエリサービスで、Amazon S3 内のデータを標準 SQL を使用して簡単に分析できます。
Amazon DynamoDB
Amazon DynamoDB は、規模に関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスを実現する、key-value およびドキュメントデータベースです。完全マネージド型マルチリージョン、マルチマスターで耐久性があるデータベースで、セキュリティ、バックアップおよび復元と、インターネット規模のアプリケーション用のメモリ内キャッシュが組み込まれています。